2012年私的マンガベスト

長篇部門

01. こうの史代ぼおるぺん古事記 (平凡社・web平凡連載終了) asin:4582287484
02. ふみふみこぼくらのへんたい (徳間書店・月刊comicリュウ連載中) asin:419950320X
03. 永井豪高遠るいデビルマンG (秋田書店月刊チャンピオンRED連載中) asin:4253231772
04. ヤマザキマリ:ジャコモ・フォスカリ (講談社・月刊office YOU連載中) asin:4420152583
05. 瀬口忍:囚人リク (秋田書店週刊少年チャンピオン連載中) asin:4253206999
06. ろびことなりの怪物くん (講談社・月刊デザート連載中) asin:4063657175
07. 小沢としお:ガキ教室 (秋田書店週刊少年チャンピオン連載終了) asin:425321729X
08. 岩岡ヒサエ:星が原あおまんじゅうの森 (朝日新聞出版・隔月刊ネムキ連載中) asin:4022131829
09. よしながふみ:大奥 (白泉社・隔月刊メロディ連載中) asin:4592143094
10. 東山翔:prism (芳文社・隔月刊つぼみ連載休止中) asin:4832241400
11. 雨隠ギドまぼろしにふれてよ (新書館・月刊ウィングス連載終了) asin:4403621538
12. 阿部洋一:血潜り林檎と金魚鉢男 (アスキー・web月刊電撃ジャパン連載休止中 [掲載誌休刊]) asin:4048911813
13. 押切蓮介ハイスコアガール (スクウェア・エニックス月刊ビッグガンガン連載中) asin:4757538413
14. 片山ユキヲ:花もて語れ (小学館・週刊ビッグコミックスピリッツ連載中) asin:4091850898
15. huke鈴木小波ブラック★ロックシューター イノセントソウル (角川書店・月刊ヤングA連載終了) asin:4041202841
16. 小川麻衣子:ひとりぼっちの地球侵略 (小学館・月刊サンデー連載中) asin:4091238785
17. 天堂きりん:きみが心に棲みついた (講談社・隔月刊Kiss+連載中) asin:4063767108
18. 近藤るるる:アリョーシャ! (少年画報社月刊ヤングキングアワーズ連載中) asin:4785939729
19. やまむらはじめ:天にひびき (少年画報社月刊ヤングキングアワーズ連載中) asin:4785939303
20. 南Q太:ひらけ駒! (講談社週刊モーニング連載中) asin:4063871703
. 草間さかえ:魔法のつかいかた (新書館・月刊ウィングス連載中 [自作同人誌リメイク]) asin:4403621481

中短篇部門

01. 阿部共実空が灰色だから (秋田書店週刊少年チャンピオン連載中) asin:4253217184
02. サトーユキエ:愛しの可愛い子ちゃん (集英社・隔月刊Cookie連載中) asin:4088672542
03. 水谷フーカ:満ちても欠けても (講談社・月刊Kiss連載中) asin:4063767493
04. イシデ電:ラブフロムボーイ (朝日新聞出版・不定期刊シンカン連載中) asin:4022140909
05. 道満晴明:ニッケルオデオン (小学館・月刊IKKI連載中) asin:4091886167
06. 卯月妙子人間仮免中 (イースト・プレス・描きおろし) asin:4781607411
07. ふみふみこ:そらいろのカニ (幻冬舎・月刊comicスピカ連載終了) asin:4344826868
08. 有間しのぶ:リバーサイド・ネイキッドブレッド (祥伝社・月刊フィールヤング連載終了) asin:4396765657
09. 坂井音太/玉置勉強:ちゃりこちんぷい (集英社月刊グランドジャンプPREMIUM連載中) asin:4088794494
10. 大石まさる:カラメルキッチュ遊撃隊 (少年画報社月刊ヤングキングアワーズ連載中) asin:478594028X
11. 重本ハジメ:鬼さんコチラ (秋田書店週刊少年チャンピオン連載終了 [単行本化未定])
12. サメマチオ:春はあけぼの 花もなう 空もなお (宙出版・web週刊Next comic ファースト連載終了) asin:4776796082
13. 穂積:式の前日 (小学館月刊フラワーズ) asin:4091345859
14. 九井諒子:竜のかわいい7つの子 (徳間書店・月刊comicリュウ) asin:4047284084
15. 馬瀬あずさ:片想いの逆襲 (講談社・月刊デザート+隔月刊Theデザート) asin:4063657086
16. 琴葉とこ:メンヘラちゃん (イースト・プレス・描きおろし [自作webマンガリメイク]) asin:4781608248
17. 高畠エナガ:100-HANDRED (集英社・月刊スーパーダッシュ&ゴー!) asin:4087824780
18. 小池田マヤ:誰そ彼の家政婦さん (祥伝社・月刊フィールヤング不定期連載中) asin:4396765649
19. 桐木憲一:東京シャッターガール (日本文芸社週刊漫画ゴラク連載中) asin:4537129816
20. 久嘉めいら:優等生の遊び方 (小学館・隔月刊Cheese!増刊+ケータイ月刊モバフラ) asin:4091346251
21. 紙魚丸:JUNK LAND (ワニマガジン社・月刊comic快楽天) asin:4864361762
22. ハトポポコ:平成生まれ (芳文社・月刊まんがタイムきららキャラット連載終了) asin:4832242261
23. kashmir百合星人ナオコサン (アスキー・月刊comic電撃大王連載中) asin:404886498X
24. 武嶌波:LOVE DOLLS (祥伝社・月刊フィールヤング連載終了) [asin:]
25. 安堂維子里:Silent Blue (祥伝社・月刊フィールヤング連載終了) asin:4396765533
. コナリミサト:魔法主婦マジカルミュー (集英社月刊ジャンプ改連載中) asin:4088794281

コメント

例年同様、続き物で単行本3巻以上(になりそうなもの)を長篇、2巻以内の続き物を中篇、連作でも読み切り形式のものは短篇としています。「積極的にランキングに入れたい作品を挙げてゆき、5作程度残して線を引く」のがちょうど良い印象で、2012年は長篇20作、中短篇25作となりました。マンガは本来、中短篇の充実の上に長篇があるべきで、「とりあえず連載させて人気が出たら引き延ばして長篇化、人気が出なければ即打ち切り」という近年(とは言っても20年以上)の風潮には馴染めなかったので、ようやく正常化されてきた模様です。そして中短篇部門の新人作家率の高さ! もはや雑誌は売れないことが前提になり、良い単行本を作るためには自ずとそうなるのでしょう。「コメントは後ほど」では結局書かないことが明らかになったので、今回は各1行で:


(長01) 古事記1300周年でマンガ化企画も幾つかあったが、絵の力でテキストは原文通りというフォーマットは圧倒的だった。
(長02) ブームでは不問にされてきた「男の娘として生まれるのではない、男の娘になるのだ」を正面から描いたら凄いことに。
(長03) デビルマンリメイクは星の数ほどあったが、原作ストーリーをアニメ版設定でという発想がもたらした化学変化に驚嘆。
(長04) 『テルマエ・ロマエ』は、この連載の場を得るための手段だったのか。60年代の文壇と風俗を泥臭く描く大河ドラマ
(長05) 少年誌で脱獄ものという物珍しさを超えて、権力のエグさ汚さをこれでもかと描いて娯楽として成立させる本物の力技。
(長06) 少女マンガ冬の時代の終わりに現れた希望の星は、どうやら救世主になれたようだ。11巻のクライマックスには震えた。
(長07) ナンバシリーズでヤンキーマンガの新機軸を打ち出した作者の教師マンガ。「適当さ」がリアルで面白かったのだが…
(長08) 『土星マンション』はメディア芸術祭大賞に輝いたが、作者はむしろこちらに魂を注ぎ込んでいた。圧倒的な視覚表現。
(長09) 家光篇のクライマックスも今は昔、その後は低空飛行が続いたが、田沼意次と平賀源内の登場で物語が再び輝き始めた。
(長10) LO誌では突出していた作者が、女性作家に劣らぬ真摯な表現で百合ジャンルに新たな光を当てたのだが…再開を望む!
(長11) BLにもファンタジーにも「外部」であり続ける姿勢が佳作を生み続ける秘訣。まとめに入りやや甘くなったが無事着地。
(長12) ノンストップで読者を驚かせ続けた作品が小休止し、次の展開に入ったところで掲載誌休刊。運のない作者に幸あれ!
(長13) アーケードゲーム×ラブコメで話題沸騰だが、豊作続きの中で冷静に眺めればこんなもの。それにしても女子が可愛い。
(長14) 朗読の世界をややゆったり描き過ぎていたが、週刊連載に移行してちょうど良いスピード感になった。これからが本番。
(長15) あの1枚絵からよくぞここまで。もはや風前の灯のボカロ文化において、ヒッキーPと並ぶ達成が本作と言って良かろう。
(長16) あだち充直系絵柄で意外とハードな宇宙戦争もの。『最終兵器彼女』とは違い、日常でも力関係は変わらないのが良い。
(長17) 被害者タイプのOLがDV男に虐待されるが、それでも依存してしまう地獄を淡々と描く。1巻の衝撃が薄れた今後が勝負。
(長18) ロリコンブームの残り香漂う時代にデビューした作家が、風雪を経て美少女暗殺者ものでピークを迎えるとは感慨深い。
(長19) 昔も今も、クラシックマンガは勘違いのオンパレードだが、ここまで芸術の本質に迫った作品が読める日が来ようとは。
(長20) 『3月のライオン』とは対照的な角度から、将棋の真実を描き続ける稀少な作品。女流棋士編に突入してヒートアップ!
(長/次) 一般誌でも才能を見せながらBL表現に拘り続ける作者が、デビュー直前に描いた大作の一般誌用リメイク。嵐の予感!


(短01) 2012年のみならず、10年代を代表する作品なのは疑いない。5巻分に入っても枯渇どころか、新しい扉が開かれている。
(短02) 少女マンガに求めていたものすべてがここにある。ストーリー巧者がユーモアと豊かな表情を得たら死角はなくなった。
(短03) 彼女が描く少年少女の物語に感じ続けていた違和感が氷解。ラジオ局を舞台に描かれる、大人の純情と仕事の喜びに涙。
(短04) 少年少女の物語こそ、重く面倒臭くあるべきだ。「志村貴子のアシスタント」臭が絵柄から抜けたら、物語も師匠超え。
(短05) 他の誰も描けない奇妙な味の連作短篇を3本並行で連載し、数年に一度出る単行本は常にランキングに絡む。半端ない…
(短06) 『実録企画モノ』『新家族計画』の頃の絵でこの内容なら年間ベストを争うが、凄絶な実体験だけなら文字で良いので…
(短07) 幾度も生まれ変わりながら、愛し合い憎しみ合うことを運命付けられたふたりの物語。やや小振りだがズシリと腹に響く。
(短08) 静かな時間の中で紡がれる儚い純愛物語。エピローグの年代の飛び方に作者の深い思いが見える。なぜ打ち切ったのか…
(短09) かしまし三人娘と草食少年のブルーズ物語は、掲載誌変更で人物再紹介の機会に闇が深く掘り下げられ、一層趣を増した。
(短10) 日常ファンタジーを装った壮大なSFを得意とする作者の『水惑星年代記』以来の成功作。連載はいよいよ佳境に入った。
(短11) ややラフで軽い絵柄を圧倒的なコマ割りと大胆な構図で補い、鬼をめぐる因縁話を見事にまとめきった。是非単行本化を。
(短12) 現代の日常ドラマに枕草子二重写しにする手法の連作。踏み込み過ぎない短篇が持ち味の作風にぴったり。企画の勝利。
(短13) 絵もストーリーも、新人離れした上手さ。それだけに滋味深い短篇に留まるべきではなく、『さよならソルシエ』に期待。
(短14) デビュー作同様、竜がモチーフの短篇集だが、話の幅が広がった分面白くなった。次も長篇ではなく、さらなる奇想を!
(短15) バカ女が完璧王子への片想いをこじらせ実らせる連作。「この初恋のれきし」のスケールと緻密さにろびこ二世の面影が。
(短16) 中学生時代の自伝的webマンガのセルフリメイク。鬱病不登校の女子が友人たちの献身で回復する真っ直ぐな成長譚。
(短17) 集英社少年マンガ期待の星は、ラノベ中心の雑誌で自由に羽を伸ばしている。この才能は確かにジャンプには向かない。
(短18) いまや作者の代表作になった家政婦里シリーズでも、特に情念が重くまとわりついた連作。大幅加筆できれいにまとめた。
(短19) 北条司に連なる端正な絵柄で、街歩きとカメラ蘊蓄を無理なく両立させてきたが、青春ストーリーも加わってさらに充実。
(短20) 従来の少女マンガの性表現は行き過ぎではなくまだ不十分だったと気付かせる。ドロドロの愛憎劇の果ての浄化は感動的。
(短21) 00年代前半のエロマンガの充実は今日望むべくもないが、森山塔を思わせる軽みも近年絶えて久しかったので懐かしい!
(短22) 日常系萌え4コマの定型からどんどん外れた1巻、新たな4コマのリズムを予感させた2巻。次作への期待を込めて挙げる。
(短23) 萌えマンガを内側から壊し続ける作者の真価は『てるみな』を待ちたいが、巻を重ねるほど壊れて面白くなる本作も凄い。
(短24) 『電氣ぶらんこ』の穏やかな日常描写から、人形にまつわるより不穏な連作へ。青年誌風の慌ただしい幕引きが惜しい…
(短25) 前2作が宇宙に広がるイメージだったので、水底に降りてゆくイメージの対比が興味深かったが、これもあっさり終了…
(短/次) 魔法少女が主婦になっても戦い続けないといけないとしたら…という魔設定だが、敵は常に卑小なので辛うじて笑える。


なお、あらためて説明するまでもないかもしれませんが、色分けについて:
デビュー同然:読み切りや短期連載を経て(あるいは一切経ずに)、この作品で初めて広く読者に認知された作家。
作家歴約5年:短篇集や長篇連載の経験を経て、この作品で新境地を開いたり、過去の仕事をまとめたりした作家。
作家歴約10年:順調か不遇かはさまざまなれど。約10年にわたって自らの信じる道をひとすじに歩んできた作家。
作家歴約20年:自らの信じる道を行くだけでは済まされない幾多の修羅場を経験し、約20年生き残ってきた作家。
作家歴30年超:もはや編集者の一存ごときでは動かせない存在感を持ちながら、依然自己模倣を免れている作家。